「情報分電盤を導入せずに各部屋にLANを配線する」という2023年の記事が、このブログでいまも読まれ続けています。検索語を見ると「情報分電盤」のほかに「情報分電盤 いらない」「新築 情報分電盤」が並んでいて、新築で情報分電盤を入れるかどうかを迷っている人が今も多いことがわかります。そこで家を建ててから3年半経ったので、振り返りを書くことにしました。
私は情報分電盤の導入を見送りましたが、当時その決め手だった「LANケーブルがCAT5eしか選べない」「ハブが1Gbps止まり」という制約は、2026年の情報分電盤には当てはまりません。主要メーカーの製品は10Gbps対応の時代に入っています。この記事では、2026年の製品事情を整理した上で、あらためていま家を建てるならどう判断するかを考えます。
情報分電盤とは何か
情報分電盤は、各部屋へのLAN・テレビ・電話の配線を1つのボックスに集約して管理する住宅設備です。その中には、各部屋への有線LANを束ねるスイッチングハブと、テレビの電波を各部屋に分けるための分配器が収められています。光回線のONUやルーターを置くための棚も用意されているので、ネットワーク機器一式をこの箱の中に収めることができます。

呼び名はメーカーごとに違います。因幡電機産業は「Abaniact」ブランドの「情報盤」、パナソニックは「マルチメディアポート」、サン電子は「コムスペース」(COM-Sシリーズ)という名前で展開しています。ハウスメーカー側にも独自の呼び名があり、セキスイハイムの「THW」は、少なくとも我が家が建てた2023年時点では、Abaniactの情報盤を採用したシステムでした。ハウスメーカーとの打ち合わせで「各部屋に有線LANを引きたい」と伝えると、たいていこれらのどれかが提案されることになると思います。
導入すると、引き渡しの時点で各部屋の壁にLANジャックがあり、配線は箱の中に隠れて見えません。この「綺麗に収まって、すぐ使える」ことが情報分電盤の価値です。
2023年に見送った理由
我が家が見送った理由は、性能でした。当時のTHW(Abaniactの情報盤ATFタイプ)は、LANケーブルがCAT5e、スイッチングハブが1Gbpsという構成で、これより上を選ぶ手段がありませんでした。LANケーブルとテレビの同軸ケーブルが一体になったハイブリッドケーブルで配線されるため、後からLANケーブルだけ高性能なものに入れ替えることもできません。
10GbpsのLANを組みたい場合、ケーブルもハブも情報コンセントも全部交換になります。それなら最初から全部自前の方が確実だと考えて、空配管とCAT6Aケーブルの構成を選びました。このあたりの検討の詳細は当時の記事に書いています。

実際にどう配線したかはこちらの記事にまとめています。

情報分電盤の今(2026年)
それから3年、見送りの理由だった性能面は、2026年の製品では解消が進んでいます。いま家を建てる人が選ぶのは、この世代の情報分電盤です。
| メーカー・製品 | LAN側の性能 | 補足 |
|---|---|---|
| 因幡電機産業のAbaniact(情報盤ATX + AH-08GPX) | 8ポート全て10Gbps(ファブリック160Gbps以上・ノンブロッキング) | 10G対応ハブは2024年4月発売。CAT6Aのハイブリッドケーブルも用意 |
| サン電子 コムスペース(COM-S62G8B-GN/COM-S62G16B-GN) | 8ポート全て10Gbps(ハブ1台または2台)。処理能力は見当たらず | 2021年12月発売の2.5G/10G混成モデルは生産終了。現行は全ポート10G |
| パナソニック マルチメディアポートALLギガ/Sギガ | 1Gbps | 壁埋め込みWi-Fi 6アクセスポイント「つなげてねっとAP」を別途展開 |
| セキスイハイムのTHW | 2023年時点でCAT5e + 1Gbps | 最新仕様は要カタログ確認 |
象徴的なのは、THWの中身のメーカーである因幡電機産業自身が、10G機材の収容を前提にした新型情報盤ATXタイプと、8ポート全部が10GBASE-T対応のスイッチングハブAH-08GPXを出したことです。このハブはポート速度だけでなく処理能力も公表されていて、スイッチファブリック160Gbps以上(8ポートが全二重で同時に10Gbpsを出し切れる容量)、パケット転送能力119Mpps以上、ノンブロッキング対応と明記されています。一方、サン電子のハブはバッファロー製という案内のみで処理能力の数値は公表されておらず、パナソニックも同様です。カタログにポート速度しか書かれていない場合は、この処理能力も確認ポイントになります。CAT5eの制約の原因だったハイブリッドケーブルにも、CAT6A版が追加されました。「情報分電盤を選ぶとCAT5eになる」という2023年の構図は、製品レベルではすでに崩れています。
回線側の環境も変わりました。10Gbpsのフレッツ光クロスは、NTT東日本が2026年10月にエリアカバー率80%超え、NTT西日本は2025年度内に全府県提供と発表しており、「都市部の一部で使える特別な回線」から「普通に選べる回線」になっています。
ただし注意が必要なのは、最新の製品が10G対応になったことと、ハウスメーカーの標準仕様がそれを採用していることは別だという点です。標準仕様は枯れた構成が使われ続けることが多いので、検討する場合は「情報分電盤を入れるか」だけではなく「どの型番の情報盤とハブが入るのか」まで確認することをおすすめします。
もう1つ、カタログからは読み取りにくいのがポート数の余裕です。情報分電盤のハブの全ポートを居室用に使えるわけではありません。ルーターへの接続に加えて、蓄電池や太陽光パネルのリモコン、HEMS(家庭の電力使用を集計・管理する装置)といった住宅設備が有線でつながってくるからです。我が家にも、蓄電池・太陽光パネルのリモコン、快適エアリー(セキスイハイムの全館空調)、AiSEG2(パナソニックのHEMS)につながるケーブルが3本、入居時から来ていました。THWの検討時に、ハブは14ポートあるのに情報コンセントは8個が目安と案内されたのはこのためです。新居に欲しいジャック数と住宅設備の本数を合計して、余裕があるかを型番とあわせて確認しておくことをおすすめします。
入れずに3年住んだ実際
さて、情報分電盤を見送った側の我が家ですが、3年住んでどうなったか。
各部屋に引いたCAT6Aジャックの使い道は、大きく2つです。1つはWi-Fiアクセスポイントの接続で、1階と2階に1台ずつ置いています。もう1つはテレビ・AVアンプ・Blu-rayレコーダーといった据え置き家電の有線接続で、場所によっては途中にハブを挟んで複数台をぶら下げています。屋外に向けた1本の先には、PoE(LANケーブルで給電もする規格)対応のスイッチ経由で監視カメラを2台つないでいます。
据え置き家電を有線に寄せているのは、Wi-Fiの帯域が全機材共有となるからです。可能な限り有線に逃がせば、その分だけスマートフォンのような無線でしかつながらない機材に帯域が残ります。一方で、どの機器も個別に見れば100Mbpsもあればだいたい足りていて、CAT6Aの性能を要求する機器は居室側にはまだありません。
そして公平のために書くと、宅内はいまだに1Gbps運用です。10Gbpsを見据えて選んだCAT6Aはまだ本来の性能を発揮していないというのが実情です。
それでも情報分電盤なしを後悔していないのは、機材の自由度のためです。我が家のルーター周りには、4Uラックに載せたUniFi Dream Machine SEとパッチパネルに加えて、Home Assistant用のRaspberry Piが置いてあります。こうした「後から増えた機材」を並べられるのは棚だからで、情報分電盤の箱の中では収まりが悪いです。ネットワークを趣味にしている人ほど、機材は増えます。
10Gbpsが効くのはアクセスポイントの幹線
まだほとんどが1Gbps運用のままの我が家が言うのもなんですが、10Gbpsの宅内LANがどこで効くかはおおまかに見えてきました。
どちらかといえば各部屋の端末ではなく、Wi-Fiアクセスポイントへの幹線(バックホール:アクセスポイントとルーターの間をつなぐ有線区間)が重要と思います。Wi-Fi 7では無線区間の実効速度が1Gbpsを超えるため、アクセスポイントまでの有線が1Gbpsだと、そこが上限になってしまいます。アクセスポイントを複数置く家では、この幹線を2.5Gbpsや10Gbpsにできるかどうかが、Wi-Fi 7世代の体感を左右します。
我が家もUniFiのWi-Fi 7対応アクセスポイントへの入れ替えを予定していて、そのときCAT6Aで引いた幹線がようやく本来の意味を持ちます。
2026年に建てるならどう判断するか
以上を踏まえて、いま家を建てるなら情報分電盤をどう判断するか。
2023年は性能で判断できました。10Gbpsを見据えるなら情報分電盤は選外で、迷う余地がありませんでした。
2026年は性能では見送れません。10G対応の情報分電盤を型番指定で入れれば、CAT6Aの幹線もマルチギガのハブも箱の中に綺麗に収まります。ルーターとアクセスポイントを買って挿せば完成する構成が欲しい人には、素直に良い選択肢だと思います。
それでも見送る理由があるとすれば、機材の自由度です。ラックを組みたい、NASやRaspberry Piのような機材を後から増やしたい、ネットワーク機器を自分で選び続けたい。そういう人にとって、情報分電盤の箱のサイズは将来の制約になります。空配管を通して自前で配線する構成は、2026年でも有効な選択肢です。
まとめると、こうなります。
| 向いている人 | 選択肢 |
|---|---|
| 引き渡し時点で完成していてほしい。機材はONUとルーター程度 | 10G対応の情報分電盤を型番指定で導入 |
| 機材を自分で選び、増やし続けたい | 空配管 + 自前配線(情報分電盤なし) |
| 1Gbpsで十分 or 一つのWiFiルーターで家中を賄える | 標準仕様の情報分電盤で問題なし |
どの道を選ぶにしても、壁の中の先行配線(空配管かCAT6A)だけは省かないことをおすすめします。アクセスポイントの幹線という形で、無線の時代にこそ効いてきます。
まとめ
2023年は「CAT5eしか選べないから」という性能の理由で導入を見送りましたが、2026年の情報分電盤は10G対応が選べるようになりました。残っている違いは導入する機材の自由度です。
家のネットワークをどこまで自分でいじりたいかを想像してから、情報分電盤の要否と、入れる場合はその型番を住宅メーカーに指定(あるいは確認)するのが良いのではないかと思います。



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