注文住宅の間取りを考える上で、どうしてもおまけのように扱われがちな駐車場の位置どり。ただし油断をしていると、土地の形や道路の位置によっては何度も転回を余儀なくされるなど、駐車に苦労する可能性もあります。
この記事では、駐車場の位置やサイズを検討する上で考慮しておくと良い点をまとめてみます。

クルマにまつわる色々な長さ

SUVやミニバンなどの大きなものから軽自動車などのコンパクトなものまで、クルマには様々な大きさのものがあります。ですので、駐車場に必要なサイズも当然クルマの大きさによって変わってきます。
駐車場の必要サイズを「クルマの〇〇部分の長さ+α」といった形で表すために、まずはクルマにまつわる様々な長さをおさらいしておきます。

なお、これらの情報はクルマの諸元として必ずオーナーズマニュアルやウェブサイトに載っていますので、今乗っているクルマ・将来乗りたいクルマの数値を調べておくと良いと思います。

全長・全幅

上記cliccar記事の中に、とても分かりやすい図があったので引用します。

cliccar【自動車用語辞典:スペックと分類「スペック」】サイズや重量を記した諸元表の見方をおぼえよう より

駐車場のサイズを検討する上で重要なのは、いわずもがなですが、全長全幅です。
全幅は記事にも記載があるとおり、ドアミラーを含まない幅ということにも気をつける必要があります。

最小回転半径・ホイールベース

最小回転半径とは、ハンドルを左か右に目一杯切った状態でゆっくりクルマを動かした時に、外側のタイヤ(の中心)が描く円の半径のこと、だそうです。これも、JAFのサイトにとても良い記事がありました。

絵にするとこのような形です。

左折の場合は、右前輪の軌跡になる

後輪の軸の延長線上に円の中心があります。ハンドルに従って前輪が左右に動くので、中心がこのような形になるわけですね。前輪から後輪までの長さであるホイールベースと前輪の最大切れ角が最小回転半径に関係していることがわかります。
バック駐車の時だけなんだか大回りになってしまっている気がする…という方、この図をイメージしながら運転するとうまく駐車できるかもしれません。

いくつかのクルマの実例

イメージを掴むために、いくつかのクルマの全長・全幅・最小回転半径を記載します。

  • トヨタ ヤリス(21年乗用車売り上げ1位)
    • 全長:3940mm
    • 全幅:1695mm
    • 最小回転半径:5.1m / 4.8m
    • ホイールベース:2550mm
  • ホンダ N-BOX(21年軽自動車売り上げ1位)
    • 全長:3395mm
    • 全幅:1475mm
    • 最小回転半径:4.7m / 4.5m
    • ホイールベース:2520mm
  • トヨタ アルファード(ミニバンででかいのでご参考まで)
    • 全長:4950mm
    • 全幅:1850mm
    • 最小回転半径:5.8m / 5.6m
    • ホイールベース:3000mm

駐車場の大きさ

ようやく本題です。
上記の数値を使って、駐車場として必要な横幅と奥行きを考えます。

必要な横幅

横幅に関しては考え方としてはシンプルで、クルマの全幅+乗り降りに必要な幅になります。この乗り降りに必要な幅というのがクルマの種類や使い方によって変わってきます。

運転席のドア・助手席ドアともに、人が降りるだけであれば、だいたい60cmくらい見ておけば大丈夫なようです。
ただし、物を積み込んだり、子供をチャイルドシートに直接載せたりするなど、余裕をもたせる場合には90cmくらい必要になるようです。

図にすると以下のような形になります。複数台並べた場合には真ん中の空間が共用できるので必要な幅は倍にはならないということがわかると思います。

2台並べた場合は、真ん中の空間を共用できる

まとめると、以下のようになります。

  • 1台の場合には、全幅+120cm〜180cm
  • 2台の場合には、全幅×2+180cm〜270cm

必要な奥行

縦の長さ(奥行)に関しては、全長に加えてバックドアを開ける余裕を考慮しておくと良いでしょう。

昔主流だったセダンタイプのクルマではあまり気にならなかったのでしょうが、SUVやミニバンの場合、大きくバックドアが開きます。
主要諸元のページにはその長さが載っていないことが多いのですが、一部のクルマはウェブサイトに記載があります。例えば、トヨタのアルファードはこちら。

上のサイトを参考にすると、だいたい全長に加えて1m見ておけば良いようです。
バックドアを開けた際に、後ろに立ってバックドアが開いていくのをやり過ごすには、さらに人が立つ長さが必要になります。足の大きさから考えると、ざっと30cm程度でしょうか?

国の基準は?

国土交通省が基準を出しているようです。普通乗用車の場合、2.5m x 6mだそうです。特にリクエストをしない場合、ハウスメーカーさんはこれらの値を使用するかもしれません。駐車場を大きくするとその分建物が小さくなってしまい、建築費用も下がってしまいますからね。
ぱっと見、横幅が少し余裕がなさそうです。また、自動車のタイプによってはバックドアの開口がギリギリになりそうですね。

https://www.mlit.go.jp/road/sign/kijyun/pdf/19920610tyuusyajou.pdf

駐車場の位置

これまでの情報で、駐車場として確保しなければいけないサイズがわかりました。ただ、駐車場を土地のどこに配置しても使い勝手が変わらないのかと言えばそうではありません。ここでは、駐車場の位置によって使い勝手が変わる例を見ていきます。

駐車場前の道路に左折して出るケース

左側通行の日本では左折の方がカーブがキツくなるので、以下の図のように自宅駐車場から前進・左折するケースを考えてみます。

家を出て左折するケース

この状態でハンドルを左に目一杯切ると、こうなります。

車線に合わせてハンドルを切ると隣地にかかる

内輪差があるので、左側を塀などにぶつけてしまいます。ですので、主に以下の2つの方法で避けることになります(合わせ技になることも)。

  1. ぶつからないように前に出る
  2. ぶつからないように塀から離れた位置に停める

それぞれ見ていきましょう。

まずは、「ぶつからないように前に出る」ケースです。

ぶつからないように前にでてからハンドルを切る

塀ギリギリに停めている場合、およそ後輪が敷地をまたぐくらいまで前進しないとサイドがぶつかってしまいます。ですので、そこまで前進し
後にハンドルをフルに切れば、だいたい最小回転半径分だけ前に出て左を向くことができます。

ここで、上の方で記載したアルファードの最小回転半径を確認してみると、5.8mありました。一方で、みなさんの家の前の道路幅はどの程度でしょうか?私道(指定道路)などでは4mちょっとというところも珍しくありません。その場合には、切り返しなしに左折することは難しいということになります。

次に、「ぶつからないように塀から離れた位置に停める」ケースです。

ぶつからないように塀から離れた位置に停める

この場合は、塀からおよそ「最小回転半径−全幅」分だけ離れて停めれば図のように曲がり切ることができます。
同じくアルファードの数字を使うと、4mほど塀から離す必要がでてくることが分かります。
この4mもの空間に何も置かないというのはなかなか難しいですが、下の図のように玄関ポーチ前などの「空き地」を活用する方法は考えられそうです。

玄関ポーチ前の空間を活用する

さらに、これらの合わせ技?が以下のようなケースです。この場合は、左折だけでなく、右折の際も見通しが良くなりますね。

玄関ポーチ前の空間を活用する。右折もしやすくなる

具体的な数字で計算してみる

せっかくなので、上の方で例を出したクルマの実際の数値を使って計算してみます。この中で一番大きなクルマ、アルファードの数字を使います。

クルマ全体の円の軌跡

最小回転半径は、前輪部分が描く軌跡でした。実際にはタイヤの前にオーバーハングがあるので、ハンドルを目一杯切った時のクルマの軌跡はもう少し大きな円になるはずです。

三平方の定理、使います

上の図の小さい円弧が最小回転半径rの軌跡です。
ホイールベース3mなので、そこから三平方の定理を使ってxを算出できます。そうすればRを算出できます。全部まとめると、以下の式で計算できます。

x = \sqrt{r^{2} - WheelBase^{2}}
R = \sqrt{r^{2} + FrontOverhang ( 2 {WheelBase} + FrontOverhang )}

最小回転半径よりだいたい50cmくらい大きな円になるようですね。

ハンドルを最大に切った時の後退の軌跡

ここで得られた数字を使うと、後退の時に必要なスペースなどを計算することができます。

ハンドルを目一杯切った時の後退のイメージ

ハンドルを目一杯右に切って後退したとき、上の図でも分かる通り、クルマ左前が左側に出っぱります(気をつけないとバックしている最中にガリっとやっちゃうやつですね)。この幅がどれくらいかというと、①1.35mほどと分かります。

また、駐車位置からどれだけ前進してから後退を始めればいいかも計算でわかります。だいたい②8.91mです。駐車枠よりも最後尾が2.11m(= 8.91 – 1.85 – 4.95)ほど前進してから後退を始めればピッタリ止めることができるということになります。教習所で後退駐車するときに習ったテクニックはまさにこれです。

いやいや、わざわざ真っ直ぐの状態から後退を始めなくてもいいじゃない?というツッコミをした方、その通りです。さては、車体感覚がしっかり掴めてる方ですね?
上図のクルマの残像?の位置のどこから後退を始めても同じ位置に駐車できるので、車を左斜めの状態にしてから後退を始めればそれだけ前進する距離は短くて済むことになります。

まとめ

クルマの諸元表に記載されている全長・全幅・最小回転半径・ホイールベースなどの数値から、駐車場に必要なサイズや、どの位置にあると使いやすいかを考えました。

出庫の際には切り返すこともあるので駐車場の位置についてはあまり神経質になる必要はないのですが、駐車がどれだけ簡単・難しそうかはクルマのサイズに加えて最小回転半径なども関係してくるということを理解しておくといつか役に立つと思います。

蛇足

駐車場だけでなく、注文住宅の間取りを考える上で想像をめぐらせなければいけない「サイズ」がいろいろあります。

こちらの本は、住宅における様々な「サイズ(寸法)」が記載された本です。どういうこと?と思われる方は、ぜひリンク先の画像をご覧ください。
それでビビッときた方は是非。建築関係のお仕事に携わっていない方にもおすすめの本です。

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