電気料金が高騰している昨今、できるだけ支払額を抑えたいと思っている方も多いと思います。
この記事では自宅の設備を例に、オール電化かつ太陽光パネル・蓄電池ありという家で充電設定を最適化して支払額を抑える方法を考えます。
(参考)自宅の太陽光パネルと蓄電池のスペック
- 太陽光パネル定格出力:8.88kW
- 蓄電池容量:ニチコン12kWh
- パワコン:ニチコントライブリッドパワコン ES-T3
電気料金と再生可能エネルギーの買取価格の比較
まず、足元の電気料金がどうなっているかを確認します。
東京電力のオール電化向けのプランであるスマートライフプランLは23年1月は以下の料金です。電力量料金、燃料費調整額、再エネ賦課金はいずれも1kWhあたりの金額です。
基本料金 (1kVAにつき) |
電力量料金 | 燃料費調整額 | 再エネ賦課金 | |
---|---|---|---|---|
286.00円 | 午前6時〜翌午前1時 | 午前1時〜午前6時 | 12.99円 | 3.45円 |
25.80円 | 17.78円 |
そして、再生エネルギー買取価格は以下の通りです(1kWhあたりの金額)。
2021年度開始 | 19円 |
---|---|
2022年度開始 | 17円 |
2023年度開始 | 16円 |
つまりは、基本料金を除くと、
- 電気を買うときは、(電力量料金+燃料費調整額) x 1.1+再エネ賦課金で
- 37.297円(夜) or 46.119円(昼) / 1kWh 支払う
- 電気を売るときは、
- (2022年度開始の場合)17円 / 1kWh 受け取る
ということで、発電した電気は、可能な限り売るよりも家で使った方がよっぽど良いということになります。改めてこの金額を見ると、差がすごいですね…。
蓄電池の特性
太陽光パネルだけ設置している場合には、「太陽光パネルで発電している時にできるだけ使う。それでも余ったら売電」とシンプルなのですが、そこに電気を貯められる蓄電池が入ってくると複雑になります。
蓄電池を導入したとしても無限に貯められるわけではないので、以下の二つの特性を考慮する必要があります。
- 蓄電池には容量がある。100%になってしまったらそれ以上は貯められないので、売電に回ってしまう。
- 蓄電池への充電スピードには制限がある。太陽光パネルがそれ以上発電している場合には全てを充電に回すことはできないため、売電に回ってしまう。
これらの特性を考えた上で、戦略を考えます。
基本的な考え方
目的はシンプルで、買電も売電も勿体無いので、できるだけそうならないようにしたいということです。具体的にどうしたら良いでしょうか。太陽光パネルがきちんと働く晴れの日で考えます。
太陽光パネルが働いている時間に電気を使うことを意識する
昼間は太陽光パネルが仕事をしてくれる時間ですが、その割には仕事や学校などで家が留守になり電力消費が少ない時間帯でもあります。
セキスイハイムの蓄電池(ニチコン製のトライブリッド蓄電システム)の場合、太陽光パネルから蓄電池への充電スピードは2kW程度のようなので、たとえば太陽光パネルがフル活動して6kW程度発電している場合には、差分の4kW程度が売電に回ってしまうことになります(正確には、24時間換気や冷蔵庫といった常時動いている電気利用分をそこから引いた分)。
ですので、この時間帯に売電が発生している場合には、積極的にその時間に電気を使うようにします。具体的には
- エコキュートの昼間沸き上げ(AiSEG2のAIソーラーチャージ(太陽光活用モード)を利用すれば自動でやってくれます)
- 洗濯機の洗濯・乾燥
- 食洗機
などの熱を利用するものをこの時間帯にシフトすると電気をよく使うので効果的です。
理想的な電力消費量の上限は、太陽光パネルが発電する量です。蓄電池に貯めるために電気利用を夜にシフトするのは意味がありません。どうしても電力が余った分だけ充電する、くらいの心持ちでOKです。
まとめると、
- 昼間売電が発生している場合、一部の電力消費を昼間に回せないか検討する
- 昼間買電が発生している場合、一部の電力消費を深夜に回せないか検討する
これだけを考えればOKです。
昼間の時間帯に太陽光パネルで賄えない電力消費は、深夜に蓄電池に貯めておく
東京電力のプランでは、朝6時から単価が高くなります。このあたりの時間帯は出勤・通学準備で活発に活動するので電気もよく使いますが、あいにくまだ太陽光パネルによる発電が十分じゃないので何もしなければ買電が発生してしまいます。
そこで、この朝6時以降で太陽光パネルによる発電が間に合わない時間帯のために、深夜に電力を蓄電池に貯めておくのが良いでしょう。もちろん、蓄電池の容量が十分にあり、昨日充電した電気が十分に残っているようであれば充電は不要です。
また、太陽光パネルの発電量をうまく消費できた場合は(あるいはそもそも太陽光パネルの発電量が多くない場合)、夕方になっても蓄電池が満充電になりません。そうするとしばらくすると蓄電池が空になり買電が始まってしまいますので、蓄電池が空になるタイミングをできるだけ遅くするように、朝6時より前の深夜時間帯に充電しておくのが良いでしょう。
実際の設定方法
ここでは、ニチコンのリモコンを使って現在の充電・消費状況を確認した上で、上記の考え方に沿うように蓄電池の充電設定を行います。
現在の充電・消費状況の確認
ニチコンのリモコンでグラフを表示します。
デフォルト画面から家のアイコンをクリックし、グラフ表示をクリックします。
このグラフでわかるのは、当日の発電・売買電グラフです。
青い線が発電量、緑のグラフが売電、黄色が買電を表しています。
発電されている時間帯(8時頃から16時頃まで)に売電も発生しているので、電力消費をもう少し昼間に持ってきても良さそうです。特になければ仕方がないですが…。
次に、グラフ切替を選択し、蓄電池充放電グラフに切り替えます。
ここでは、蓄電池に対していつどれだけ充電・放電したかがわかります。
このグラフからは2つのことがわかります。
- 16時過ぎに蓄電池の残量が100%になっているが、100%で張り付いているわけではないので、ちょうど良いタイミングで電気が貯まりきった。
- 深夜に少しためた電気を早々に使い切って0%で張り付いている。もう少し深夜に充電しておけば良かった。
- PanasonicのAiSEG2で確認すると、もう少し詳しくわかります。6時台〜8時台に0.8kWhくらい買電していたようです。
蓄電池の充電設定の調整
調整できるのは深夜の充電量だけですので、グラフから状況を判断して対応します。
対応方法
以下の場合は、深夜充電が短い
- ②部分が0%で張り付いてしまっている
- 深夜時間帯の充電が足りないので充電時間を伸ばす。②部分がゼロタッチする程度が理想。
- (上記対応後、)①部分が100%に到達せず、深夜より前に蓄電池の残量がゼロになっている
- さらに深夜時間帯に蓄電池に充電する。ただし、①の部分が100%張り付きにならない程度まで。
以下の場合は、深夜充電が長すぎる
- ①部分が100%に張り付いてしまっている
- 深夜時間帯の充電時間を短くする。充電0でも100%に張り付く場合は、あとは売電のみ。
充電設定の変更
ニチコンのリモコンで充放電時間帯設定画面に移動します。
充電の時間帯は(今回のプランの場合)朝6時ちょっと前に終わるくらいに調整するのが良いでしょう。蓄電池が長持ちして深夜時間帯まで残っていた場合、その時間帯の電力消費に蓄電池を使いたいので、放電停止時刻は充電開始時刻の直前にします。
放電開始時刻は朝6時固定で良いです。それより前にすると、同じ時間帯に買電して貯めた電気をそのまま使うことになるので意味がありません。
まとめると、
- 放電開始時刻は朝6時固定(高い時間帯が始まるタイミング)
- 充電終了時刻は朝6時直前(重複が許されないので5:50とか)
- 充電開始時刻はグラフを見て調整
- 放電終了時刻は充電開始時刻の直前
これで、晴れた日にはうまくいくはずです。
曇りや雨の日はどうする?
これまでは太陽光パネルが目一杯発電するケースで考えましたが、曇りや雨で太陽光パネルによる発電が見込めない日はどうするのが良いでしょうか?
これは天気予報を見て、発電が見込めない日の未明には深夜時間帯を使ってたっぷり充電しておく、が正解です。…といってもそんな設定を天気を気にして毎日いじっていられないというのが正直なところですよね。
そこで、ニチコンではAIが充電を制御するサービスを提供しています。ニチコンオーナーズ倶楽部にあるAI自動制御機能がそれです。私の家のケースではあまり効果が見えなかったので今のところオフにしていますが、日々の調整が不要になると言うのは嬉しいです。ニチコンユーザの方は是非試してみてください。
他のメーカーも似たようなサービスを提供しているかもしれません。PanasonicのAiSEG2にも太陽光活用モードがあり、充電タイミングの最適化もしてくれるようなのですが、あいにくPanasonic製の蓄電池しか対応していなようです。蓄電池が独自に動くよりも本来はHEMS側で対応するのが筋だと思うので、対応していないのは残念です…。
まとめ
ここでは、太陽光パネルと蓄電池のエネルギーをうまく使い切るための方法を紹介しました。精度はまだ100%ではないものの、自動制御することで日々の設定の煩わしさを解消することが可能です。
もしかしたら充電開始・停止指示などをプログラム経由で制御できるかもしれませんので、今度試してみようと思います。
(追記)書きました!
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