セキスイハイム ユニット工法の制約を理解し、より良い間取りを目指す

セキスイハイム

とにもかくにも「自由度が低い」といわれるセキスイハイムのユニット工法ですが、逆に間取りのルールは一般の人にも理解しやすいと思います。ルールを理解し、与えられた制約の中であれこれ考えるのもそれはそれで楽しい…とポジティブに考えることもできます。

この記事では、間取りを検討する上で分かった制約などを紹介します。

軸組工法とユニット工法のおさらい

ルールや制約を紹介する前に、まずは木造や鉄骨で使われる軸組工法とユニット工法をおさらいしておきます。あくまで比較のためなので、2×4工法などの説明は省きます。

軸組工法

軸組工法は、梁(横)と柱(縦)で平面(壁や床・天井)を作っていきます。

ただ、梁と柱だけでは構造的に弱いため、筋交い(下図のc)などの耐力壁をつけて強度を保ちます。大手ハウスメーカーでは、単なる「つっかえ棒」としての役割だけでなく、制震構造も併せ持ったものを提供していたりします。

在来工法の構造図
うぃき野郎, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

外壁に窓を配置する場合には、そこを耐力壁にすることはできません。また、耐力壁は外壁だけでなく家の中にも配置する必要があるので、いくつかの内壁を耐力壁にすることになります。

耐力壁を「どこに」「どの程度」つけるかは、間取りの形や構造計算の結果などから決まります。そのため、大開口の窓にしようと思っても実現が難しかったり、他の間取りに影響を与えたりすることもあるようです。

一方で、梁や柱の長さや位置の指定はかなり自由です。ハウスメーカーにもよりますが、15cm単位で位置や長さを変えることもできるようです。

これらをまとめれば(どこにでも書かれていますが)

  • 梁や柱の位置は自由なので、多彩な間取りの形を実現できる
  • その自由な間取りを成立させるために、耐力壁をいくつかの壁に設置する必要がある。耐力壁の位置は構造計算上必要となる場所に設置する
  • 構造計算はその場で簡単にそろばんを弾いて…というわけにはいかない。間取り変更依頼後、数日して構造上NGと返事がくることもある

となります。

ユニット工法

ユニット工法は、直方体のユニットを繋ぎ合わせて家を作り上げていく工法です。ユニット単体で必要な強度を持っているため、耐力壁を設置する必要はありません。ただ、ユニットを繋ぎ合わせていくので、室内の柱は鉄骨4本分の太さ(幅20cm以上)となり、かなり存在感があります。

また、ユニットのサイズにはそれなりにバリエーションがあるものの、一階と二階で柱の位置をずらしたり、梁と梁を直角以外の角度で組んだりすることは難しいため、複雑な外観を作ることは苦手です。

一方で、耐力壁が不要なことによるメリットもあります大開口の窓を邪魔な耐力壁を気にせず設置することができますし、室内には間仕切りを入れれば良いだけなので、室内の間取りの自由度は(柱を何とかする必要はありますが)それなりに高いです。

まとめると、

  • ユニットを組み合わせて作り上げるため、複雑な外観を作ることは苦手
  • 耐力壁が不要なため、大開口の窓の設置は容易。また、室内の間仕切り位置の調整も(ユニット間の柱を除いて)やりやすい

となります。

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ユニット工法の制約

営業や設計から提案される間取りに対して、ちょっと(あるいはドラスティックに)変えたいと思うこともあるでしょう。その際、その希望が実現の可能性があることをあらかじめ分かっていれば自信を持って主張できます。そのためにはユニット工法の制約やルールを理解しておくとよいです。

ここでは、私が間取り検討時に営業さんなどとやりとりして分かった制約やルールを可能な範囲で記載します。間違いや過不足あるかと思いますが、ご参考になれば幸いです。

ユニットのサイズ

こちらは有名です。Parfaitに関しては45センチ刻みでユニットの横幅を変えられた、という記事を以前書きました。その後確認してみたところ、やはり商品によって利用可能なユニットには違いがあるようです。

ユニットの組み上げ方

ユニットは碁盤の目のように並べていくのが基本です。ユニット頂点は隣接する3つのユニット頂点と合わさることになります。下図赤丸の部分が代表例です。

セキスイハイムのオーナーサポートページより

ただ、一部の商品においてはこれをズラすことができるようです。スマートパワーステーションアーバンのサイトには「シフトジョイント工法」のメリットを説明する動画があります。新居では全く話題にならなかったため、ズラせる幅などは聞いていません。

ズラす以外にも、どうやらユニット間を離すという工法もあるようです。10年以上前のプレスリリースになりますが、「離し置き工法」というユニット間を236mm離して配置する工法がアピールされています。あとちょっと延べ床面積を広げたいけど、ハーフユニットを入れるほどの余裕はない…といった場合には良い選択肢かもしれません。現行商品が対応しているかどうかは不明ですが、ご参考まで。

さらに、4つ集まったユニットの柱部分を抜いてしまうCレン工法というものもあります。どうしてもこの柱が邪魔、という場合には頼ってみても良いと思います。ただし、この工法を採用すると構造上の問題で別の部分で制約が出てくることもあるという点と、それなりに高額であることから、間取りを試行錯誤した後の最後の手段になるのかもしれません。

ユニットバス

ここからいくつかは「ユニット間を跨いで設置できないものシリーズ」になります。

ユニットバスはその代表例です。バスタブを床下にまで埋め込む必要があるので、ユニットバスエリアはユニットを跨ぐことができません。脱衣所は可能なはずです。

また、セキスイハイムに限りませんが、給湯器はバスルームの近くに設置するのが一般的です。給湯器から離れるほどお湯が暖かくなるのに時間がかかるからです。これは、配管内に溜まった水(冷めてしまったお湯)を追い出さないと、給湯器で作った暖かいお湯を出すことができないというのが理由です。追い出す量をできるだけ少なくするためには、給湯器の近くに置いて配管の長さを短くするのが良い、というわけです。

玄関・土間

土間収納を広く取りたいという方も多いと思いますが、こちらも基本ユニットを跨げません。土間部分は床よりも一段下がっているので、ユニットを跨いで土間を続けるとお寺の門の敷居のように梁の部分が出っ張ってしまうからです。

「基本は」と書いたのは、特殊対応可能なことがあるためです。床の梁を抜いて、代わりに柱をジョイントピースで繋ぐことで、土間の床部分を地続きにすることができます(新居で採用しました)。その代わりジョイントピース部分が少し出っ張るので、出来上がりのイメージを確認しておいた方が良いです。

また、土間の下にはすぐに基礎が来ているので、床下を自由に配線・配管することができないようです。そのため、土間の外側に給湯器などを設置することは(おそらく)できません。電気配線などは天井や壁側のルートで通すことができるため問題ないようです。

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階段

階段もユニットを跨げないシリーズの一員です。工場でユニットに組み付けてしまうからというのが理由ですが、社外品の階段を採用した場合にどうなるかは分かりません。階段を登ってる最中に梁に遭遇…となっても困るので社外品でも難しいのではないかと思いますが…。

少なくとも標準品に関しては、物によっては階段の端をユニットの梁に合わせなければいけない、などの追加の制約があったりします。

この制約は、セキスイハイムのカタログを見ればある程度わかります。

セキスイハイムカタログより

それぞれのイメージ図の右下に描かれている図にご注目。この図は以下のことを示しています。

  • ユニットを横長にしたときに配置できる図が記載されている
    • 廻り大階段は向きを変えられるが、J18階段やL型階段は変えられない
  • 太線部分は壁になるところ
  • 白抜き線は腰壁になるところ
  • □と□に囲まれた太線は、通常ユニット短辺(2.25m)の長さ
  • J18階段のように数字が入っているものは、幅を示す(J18の場合は横幅が180cm)

ただし、カタログに全てのパターンが載っているわけではないので、問い合わせが必要になることもありますが…。

U型オープン階段は、拡張踊り場のない図が載っていない

オープン階段を除けば、階段は壁で支える構造になっているため、階段下収納を設ける場合の扉の位置にも制約があります。おそらく太字部分には扉を設けられない…と思うのですが、こちらは未確認です。

もう一つ、制約というよりは気をつけた方が良いことがあります。廻り大階段などは占有面積が狭い上に階段下収納を作れるのでよく使われると思うのですが、一階天井に階段部分が出っぱる可能性があります

実際に当初提案されたものに近い間取りをベースに説明します。このような感じです。

1F。コンパクトで階段下収納まであって良さそう
2F。白い部分は腰壁

1Fの廊下は綺麗にまっすぐに見えますが…。

実際には、図面右下の廊下(左下図⬅︎の部分)に立って見ると、階段の一部が天井から斜めに生えているように見えてしまいます(右下図)。

赤い部分が階段が飛び出している部分のイメージ。灰色は壁

階段に限らないですが、建物は立体物なので間取り図だけで良し悪しを判断すると痛い目に遭うことがあります。立面図や3Dの内観図などをリクエストしてイメージを確認することをおすすめします。階段の位置やタイプを変更すると間取りがガラッと変わってしまうので、早めに気づかないと取り返しがつきません。

自分の場合、契約時はこの廻り大階段が採用されていたのですが、たまたまこちらのブログを拝見して不安になり、営業さんに立面図と内観図を出力してもらって発覚しました。

セキスイハイムで建築 階段のご紹介
セキスイハイムで建築した我が家の階段についてご紹介します。 我が家の階段はJ18階段です。踏面は21.5 cm、蹴上は20.5 cmで、段数は14段です。 階段は踏板と蹴込み板の色を同色にするか、変えるかを選択できますが、我が家は蹴込み板の部分を白色にしました。

間取り上のコンパクトさとこの風景を天秤にかけ、悩んだ結果変更することにしました。その後階段の位置とタイプだけで二ヶ月近くああでもないこうでもないとやっていたので、最終仕様確認まで余裕がなかったら変更は難しかったかもしれません。

自分の場合、このようにさまざまなブログ記事を参考に家を建てることができました。感謝してもしきれません。それを少しでも還元すべくブログ記事を書いているわけですが、果たして参考になるかどうか…。

キッチン

明確に確認したわけではありませんが、シンクの位置と梁の位置には制約があるようです。給排水の関係かもしれません。

新居ではII型キッチンを採用したのですが、シンクとコンロとの間の通路幅は85cmが標準でした。アイランドキッチンなどの場合も、カップボードとキッチン本体の標準通路幅は同じ85cmかもしれません。これは変更が効くのでルールとまでは言えませんが、リクエストしなければその幅になります。同時に二人がキッチンに立ったり、キッチン奥の冷蔵庫に行くために頻繁に通り抜けが発生するような場合にはもう少し広くしたほうが良いかもしれません。

ちなみに、通路幅はキッチンの中で一番外側にせり出しているトップパネルを基準に算出されているようです(もしかしたらキッチン枠が基準かもしれませんが)。リシェルSiの場合は床の方はもう少し幅が広くなっているため、数字以上に広く感じます。

トップパネルが1cm弱せり出している
最下段の収納は4.5cmほど奥まっている

最下段が引っ込んでいるイメージは、LIXILのこちらのページがわかりやすいと思います。

LIXIL | キッチン | リシェルSI | 施工イメージ | PLAN1
ライフスタイルの幅を広げる、アウトドアリビングを取り入れたLDKレイアウト。リシェルSIのオープン対面キッチン(アイランド型)の施工イメージです。

上記のシンク位置の制約の関係で我が家では91cmまで通路幅を広げましたが、上記の写真のように下段はシンク側・コンロ側それぞれ引っ込んでいるため、床面は幅1mほど見えることになります。

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吹き抜けとU型オープン階段の組み合わせ

耐力壁なしで強度を確保しているユニット工法ですが、吹き抜けを導入すると1Fの天井梁と2Fの床の梁がなくなるため、その分強度は弱くなります。そのため、吹き抜けとU型オープン階段の組み合わせには、階段横の吹き抜け寸法が1.8mまでという制約があるようです。あまりに空間を開けすぎると構造の最高等級がとれなくなり、長期優良などの評価が得られなくなるとのこと。

自分の場合は、補助小梁を追加で入れれば構造計算をクリアできるということで、その方針で進めました。最初は吹き抜けに梁があるのはどうなのか…とも思いましたが、小梁に吹き抜けを照らすスポットライトやDolby Atmos用のトップスピーカーを設置することができたので、結果オーライ(死語)です。

エアファクトリー(第一種換気)

ダクト

エアファクトリーの機械は床下に設置されています。ここから各部屋にダクトが通されるのですが、当然2階の部屋にも通すことになるため、床下から2階までダクトを通すための空間が必要になります。

ダクト一本あたり10cm四方くらいのスペースが必要なので、間仕切りの中に隠すことはできません。また、このスペースは家のどこかに確保すれば良いというのではなく、2階の部屋直下の1階ユニットにスペースを確保する必要があるようです。

ダクト位置は契約時点の図面では決まっていませんでした。間取りがきちんと決まっていないうちに検討しても意味がないからだと思います(自分も間取りをガラッと変えましたし…)。間取りがおおよそ決まった段階で設計担当が検討するため、施主側が気にしても仕方ないことかもしれません。

ただし、最終仕様確認のタイミングでは確実に決まっているので、想定外の位置にダクトを通すための空間(つまり内壁)が追加されていないか確認すると安心かもしれません。

吸排気ユニット

換気をするために、吸気ユニットと排気ユニットを1階の壁に取り付けます。この二つのユニットからダクトが壁を貫通して室内にやってきて、その後床下に潜ってエアファクトリーの機械に接続されます。

この「室内にやってきたダクト部分」をなんとか隠さないと格好がつきません。室内壁際にそこそこなサイズの箱が置かれることになります。

吸気ユニットと排気ユニットは、縦に並べても横に並べても構いません。その並べ方によって箱の形が変わります。

  • W900 x H600 x D450(横に並べた場合)
  • W450 x H1100 x D675(縦に並べた場合)

箱には壁紙を貼ったり、カウンター材を上に載せたりして室内に馴染ませることになります。W450やW900というのはさまざまな家具の奥行きや幅と合うはずなので、うまく横に並べたりすることもできます。

新居の場合はキッチンのシンプルストッカー横に設置し、カウンター材を載せてちょっとした小物置き場になっています。

エアファクトリー吸排気口室内側
縦に並べた吸排気口の室内側。横はシンプルストッカー
エアファクトリー吸排気口
室外の吸排気口。基礎があるので高い位置にあるように見える

標準外建材・設備

階段を標準外のものにしたいという方もいると思いますが、どの製品でもOKというわけではなく基準に適合していることが確認されたものに限られるようです。どういった基準かはよく分からず。

構造に関係がないものに関しても制約があるようで、テレビボードや洗面台に関しては、シックハウス症候群の要因となる物質を放つ建材を使っていないことを示すFスター等級で「F☆☆☆☆」を取得している必要があるようです。既に実績がある建材や設備であればすぐに回答が来ますが、そうでない場合には確認に時間がかかります。ダメなら引き渡し後に自分でやる、という方法もあると思います。

新居の場合、2階洗面台にサンワカンパニーの洗面台を、1階リビングにアイカ工業のテレビボードを導入しました。洗面台に関しては記事を書いています。

スイッチ・コンセント類

内壁には石膏ボード裏にその石膏ボードを止めるための木桟が通っています。基本的にその高さにコンセントやスイッチを置くことはできません。センチメートル単位で高さを調整しようと思っても実現不可能なことがあります。もちろん、一般的な高さには設置可能なのでそこまで気にする必要はありません。

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まとめ

間取り図をみて何とか思い返してみましたが、自分が遭遇した制約はこれくらいだったような気がします。自分達の発想が貧弱で間取りに関して平凡なことしかリクエストしなかったのかもしれませんが、「それはできません」みたいな返答は意外と少なかったような。

自分の場合は、階段を変更したあたりから自ら方眼紙に間取りを書いて営業さんに清書してもらうような形で間取りの修正を進めたため、いくつか具体的な制約を数字込みで知ることができました。営業・設計から提案される間取りが非の打ち所がないものであればわざわざ知る必要もなかったとも言えますが、その分出来上がった間取りに愛着が湧くのも事実。

間取りのブラッシュアップに少しでも参考になれば幸いです。

蛇足

他の記事でもたびたび言及していますが、間取りを考える上でこちらの書籍はとても参考になりました。

  • キッチンの通路幅はどの程度広ければ良いのか
  • ダイニングテーブルと壁の間はどのくらいあければ問題なく椅子を引いて座れるか
  • どれだけの通路幅があれば人が普通に通り抜けられるか
  • シューズクロークなど、カニ歩きで良い場合の必要通路幅は?

…といった情報はなかなか分かりません。この本は部屋ごとにキーポイントとなる寸法が大量の図で説明されているので、読むだけでも楽しいです。

寸法そのものが参考になるだけでなく、「ここの寸法を気にしなければならない」ということがわかることがありがたいです。自分の場合、必要通路幅を意識して間取り図を見直したら成立していないことが発覚し、ユニットサイズを変更したということがありました。そういう意味でも本当におすすめの本です。

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